手を伸ばせば、届く距離まで。




強く。強く、抱きしめ返した


―――ずいぶん遠回りした気がする。


能力があっては、恋なんてやっていけないと思った。


愛する人を傷つけてしまえば、すぐに分かるからだ。


そんな見透かした恋愛なんて、続かないに決まってる。


けど―――能力がなくなった今。


明里さんを愛することに、恐れなんてない。


―――久野くん、ありがとう