手を伸ばせば、届く距離まで。




「それはそうだけど…寿退社でもするかな」


「え…」


いつもなら、明里さんの顔の通り痛みが伝わってくるのに。


何も感じない。


痛みを感じない!


「嬉しそうね。…彼女、いたんだ?」


「あれ?てっきり明里さんと両想いだと思ったんですけど」


「―――なッ!」


赤い赤い。


ねえ、明里さん。


明里さんがいたから、俺は暗闇の中立ち上がれたんですよ。