手を伸ばせば、届く距離まで。




そして俺は、圭に助けられたのだ。


―――ガッ…


小さい拳で、俺を殴った圭。


いつも教室の隅っこで、本ばかり読んでいた同級生。


初めて、この時話したのだった。


圭は殴って、怒りを押し殺した声で言った。



『いたみが分かるか、久野望』



怒りを忘れた俺は、呆然としていた。


『みんなのいたみが、きずついた心が分かるか!』