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「くそっ!」

僕は部屋を飛び出してから走っていた。

「あきらんっ!」

後ろから女が一人追ってくる。なめんな。

ダタタタタタタタタタタタッ・・・・・・・・・!

「ッハァ、ハァ・・・・・・。」

しばらく走ると、もう追ってきてはいなかった。どうやらココは屋上のようなとこの扉の前らしい。

『信じようよ。』

あいつの言葉を思いだす。くそっ!むかつく・・・。

『あきら、ウチを信じてよ。』

あの女・・・ももかの言葉を思い出す・・・。

「・・・だれも信じねぇって決めたんだ。」

俺は、あの時から決めたんだ。

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物心つく頃には、親のケンカは当たり前だった・・・。

「なによっ!家族と仕事どっちが大切なのよっ?!」

「お前だって、ロクにあきらの世話をせずに遊んでばっかじゃないか?!」

「ちゃんと食い物は渡してるわよっ!」

「そういうことを言っているんじゃないっ!!」

ちゃんと眠れないのは毎日。ご飯はいつもテーブルにおいてあるお金。授業参観どころか弁当すら作らない。

文句を言ったり、泣いたりすると大きな声で怒鳴られる。だからいつも静かだった。

子供のころはよほど可愛くない子供だっただろうな。

必要最低限のことしか話さず、幼稚園の頃は部屋の端っこで絵本ばっか読んでいた。

すごく冷めてた。

外でワイワイ遊んでいるコトの意味が分からない。疲れるじゃないか。疲れるとお腹が空いてしまう。ご飯はパン一個買えるかってくらいの金なんだ。無駄なことはしたくない。

これが育児放棄だってことは後から知った。

小学校3年くらいに親が離婚して父親のほうにいった。離婚の理由は浮気だ。母が浮気していた。相手は7歳年下の若い男。

母親と違って父は育児をがんばっていたが仕事も忙しく大変だったのであろう。生活はあまり変わらなかった。夜静かにねれるようになったくらいだ。

僕はいつも一人でいるやつだったので、当然のようにいじめが起きた。上履きを隠されたり、机に『シネ』って書いてあったり。

冷静にスリッパを履いたし、机もそのまま使った。別に動じなかった。あぁ、でも頭に牛乳かけられたときはそのままにしとくわけにもいかないので少し困った。

反応が無いのがつまらなかったのか、いじめは2年くらいで終った。

そして大きな事故が小6の春休み、中学になる少し前に起こった。

大きな事故と言っても普通に居眠りしていたトラックの運転手が人を轢いたってものだ。

ただし、轢かれたのは父だったけれど。