冷たい水が跳ねて服を濡らした。
美術室から見えるプールは、もう濁って汚くなっていた
「あ!そだ。今日待っててね!」
「おー」
今日も一緒に帰ろうという意味をこめた言葉を今日も微笑んで受けてくれた。
(やっぱ、記念日忘れてるかなー)
…水で洗った手は、真っ赤になり冷えきっている
「帰ろ、ちび。」
――校門で、いつものように待っていたら友達と話ながらやってきた。
「ちびじゃないやい」
「はいはいはい。行こ」
吐き出した息は、白くなり空気中にとけた。
もうすぐ、苦手な冬がやってくる。
「この指輪、入んない。ほら」
「ほんとだ。第一関節さえだめじゃん。」
彼の手のひらには、磨きかかったシルバーリングがあった。それもサイズのあわない
「んー…、あ。」
「お」
冷えきったあたしの薬指にぴったりとはまった指輪。
それをみて彼は嬉しそうに笑った。
「あげる。ぴったりだしね。」
「え」
右手の薬指にぴったりとはまった指輪は、夕日に照らされてキラキラと光った
「…あ、今日何日」
「…11…」
「記念日じゃん」
覚えてたんだねと呟くと、軽く頭をはたかれた。(たぶん、バカにするなって意味かな)
「あ!今日サッカーじゃん!早く帰ろっ」
「は。え、ちょっと待って」
はや歩きをしだす彼の手を握ったらきゅっと絡まった指。
「本物は大人になったらかなー」
と呟いた君の顔はほんのり赤くて、めちゃくちゃ嬉しくなった
シルバー

