「磨くの飽きるねー」
「ねー。」

木々の葉たちは落ち、肌寒くなってきた今日この頃。
今は美術の時間。

制作しているものは銀でできた指輪。
シルバークレイ(というらしい)この授業は、粘土でできたとても高価な銀を自分たちで形作り、焼いて、磨くというものだった。

「先生これくらいー?」
「まだまだ。磨け磨け」
「うへぃ」

親友の、佐都(さと)が指輪にするといっていたから指輪にしたんだけども。
(いびつ極まりない)

「あー、彼氏ほしい」
「そっすか」
「うざっ」
「ふへへ」

のろけんなと、汚れた手で頭を叩かれた
あたしまだふへへしかいってないのに…!

磨く手を止めて、ストーブの前で制作をしている彼に目を向けた。
友達と笑いあうその笑顔に胸きゅん。
ジャージ姿もまたカッコいい

「いやいや、ジャージ姿何回もみてんだろおめー。」
「だって彼氏くんイケメンすぎる !」

「今日やたらのろけるね、普段めったに言わんのに。」
「記念日っすからな」

なるほどと、呟いた智はまた磨きの作業に取りかかった。
今日は記念日。二年と三ヶ月。
まー、彼はきっと記念日って言わなきゃ忘れてるだろう

「はい、授業おわりー!片付けしてー」

先生のかすれたような声が冷えきった美術室に響いた。

蛇口をひねると勢いよく飛び出す水。

「うぉー、水冷たいー!」
「うるさいよー、ちび」

声のしたほうへ首をむけると先程まで話題にでていた彼がいた。

「ねー俺、指輪作ってたのに、指にはいらなくなっちゃった」
「ふはっ、まじかっ」
「うんー。」