「な、なんで」
小さく呟いた声はドアをあける音にかき消された
「あー」
――使われていない空き教室は酸素が薄くて埃くさい。薄暗いこの部屋に、雅は息をきらして座りこんだ
「バカ。ほんとバカ」
「ご、ごめんなさい」
ペタンと、彼の横に腰を下ろすと、彼はまた小さくため息をこぼした。
「ごめんね、ずっと話しかけなくて。」
小さく首を横にふると大きな手で頭を撫でてくれた。
「もう、怒ってない?」
「うん。てか、もともと怒ってないよ」
「へ」
「なんか、さ。うん。……てか、あー、ダメだ」
「?」
あー、もう。と呟くとあたしを強く抱きしめた。あたしの彼の心音が重なって、心地好い。抱きしめたまま、あたしの頭を撫でた。
「まじ、ほんと取られるかと思った…」
「っ」
「ちょう焦った。」
雅の大きな手があたしの頬に触れて、顔をあげると、耳まで真っ赤にしていた。
「好き。」
「あ、あたしも…」
「ん」
チュッと触れた唇は、なぜか少しだけ震えていて、それがすごくかわいかった。
「まあ、でもやっぱこしあんだよね」
「………。」
ちょっとしたこと。
(喧嘩して意地を張ってる君はすごく可愛くて。)
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