「――ちょっと購買いってくる」
「うい、いってらー」
教室とはちがって、とても静かな廊下をゆっくりと歩く。
下を向いて歩いていたら、前からきた人に気付かなかった。そのまま、ぶつかってしまった。
「…って……」
「わ、すいません!」
「―あれ、もしかして美樹ちゃん?」
「へ」
「遠藤美樹ちゃん?」
「あ、はい。そうっす」
二人組のおとこの人(たぶん靴のいろからして先輩)は、私の顔をじろじろ見るなり、なにかぶつぶつ呟いてる。
疑問に思い首をかしげると、急に手首を捕まれた。
「!な、なんすか」
「いま彼氏と喧嘩中なんでしょ?
俺らと遊ぼうよ」
「や、遠慮します」
この田舎はそんなことも簡単に広まってしまうのか。
いやだなもう、ほんと田舎は。
何度断っても、しつこく誘ってくる先輩にだんだんと怖さがでてきた。
「いいじゃん、行こうよ」
肩を捕まれた瞬間、涙が溢れそうになり、ぎゅっと目をつむった。
――そのとき、
「先輩」
――聞き慣れたあたしの大好きな声が鼓膜を震わせた。
「先輩すいません、これ、俺のなんで」
背中に温もりを感じ、お腹に腕がまわってきた。その温もりに涙が溢れたら瞬間、雅はあたしの腕をひいて走り出した。
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