「うわー、もー知らん!!」
―――6月上旬。
長袖から半袖にかわるこの時期。
今日は、天気予報じゃ曇りだったのに、驚くほど、蒸し暑い。
お弁当から視線を彼へと向けると、
あたしと目があった瞬間あからさまにそらした。
そう、喧嘩したのだ。とてもどうでもいいようなことで。
「こしあん派か粒あん派かで喧嘩したの!?」
「だだって、粒は歯につまるーとか言い始めたからー」
向かいに座ってお弁当を食べる智はこれでもかというくらい、白い目で私を見た。
だって、あんぱんのあんは粒だっていったら、歯につまる。こしだろ、あほか。
って言われたんだもん…!
そこまで言わなくたっていいじゃん…!
「さっさと仲直りしな、いつまでも意地はってないで。」
「い、いやだ!謝らないもん…!」
「いいの?このまんま話さなかったら自然に消滅しちゃうよ?」
「っ」
もう3日も経つんでしょと携帯に視線を映しながら智は呟いた。
この3日間、話もしなければメールも電話もない。
いつもなら、話しかけに来てくれるのに、それさえ、一切ない。
「うー…」
もう一度彼に視線をむけると、さっきまでいたところにはもういなかった。
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