「―希美、…希美!」
「ん…、あれ…」
「もう、下校時刻だよ。帰ろう?」
「んー」

起きる気にならなくて、ボーッとまさきを見ていたら、大きな手があたしの頭を撫でた。

「進路…、なにか悩んでるの?」
「え、や…、ん゛ー…」
「どーした?」

彼の、優しい声を聞いていたら、
優しいしゃべり方を耳にしたら、
なんだか涙がでそうになった。

―あのね、怖いんだよ。不安なんだよ。
周りは、決まっているのに、あたしは何もないんだ。
…空っぽなんだ。
どうしよう。怖い、恐い。
分からない未来のことを考えるのがたまらなく、怖いんだ。


嗚咽まじりに話す私の手を彼はずっと握っていてくれた。


どうして急にこんなに不安になるの。
どうして急にこんなに焦りはじめたの。

わからないな。
わからないよ。

とりあえず今は、


ヒ ト リ ニ シ ナ イ デ



「―希美、大丈夫だよ。不安なのは、希美だけじゃないよ。
みんな、どこかしらで、不安をかかえてるんだよ。」

あたしの涙を拭いながら、君は静かに微笑んだ。

「――大丈夫だよ、ひとりにしないから。…おいていかないから。」
「っ」

――嗚呼、どうして君はいつもあたしのほしい言葉をくれるの。