「最後尾までプリント回ったかー?」
「せんせー、足んなーい」
「うげ、もうそんな時期かよ!!」

――窓から吹き込む、初夏の風が長く茶色い髪を揺らした。
配られたプリントには、目を通すのも嫌になるくらい堅苦しい言葉と文字。
クラスメイトは、個々に感じたことを口にした。それはみんな、心のどこかでおもっていること。


「まだ1学期ーとか呑気なこといってんなよ、卒業なんてあっという間だからなー。
てか、おい!希美ー!!起きろ!!」
「へ、へい…」

慌てて伏せていた顔をあげると、山ちゃん(担任)が恐ろしい顔でこちらを見ていた。

窓の外の空は鬱陶しいくらい青くて、雲ひとつない快晴。となりの小学校からはプールの水の音が聞こえる。

ふわぁ…と小さくあくびをすると、斜め前に座っているまさきがこちらを振り返った。
へへっと笑うと、バーカと呟いて又手元の紙に目を通した。

周りの席の子達はみな、将来の話で盛り上がっていた。

…私、一人だけなにも考えてないのかな。あたしだけ、なのかな
なぜか、凄く寂しくなって、焦燥感にかられ、私はまた机に伏せた。