しゃがんだ彼の髪に、ポツポツと水滴が垂れていく。
二年近くそばにいてくれるこの人は、日に日に背が伸びて、今ではもう頭ひとつぶんも身長差ができてしまった。

「ん、ありがとう」
「……」
「あれですか新種の盗難ですか」
「ちがうわい。傘、あたしがもつ」
「えー」
「えー」

そんなくだらない掛け合いにふたり同時に吹き出した。
…雨は、傘を伝ってアスファルトへ落ちる、この行為を繰り返す

「…雅が左手に傘もったら、手繋げないじゃないすか…」
「手、繋ぎたいの?」
「……うん」

あたしの顔を覗きこむように問いかける君は、なぜか嬉しそうだった

「これでいいねっ」

傘をもつ、あたしの右手を包みこむように雅は左手を重ねた
腕を組むようになっていて、しかもかなり密着している。
あたしの心臓はばくばくと音がはやくなった。顔の温度が上がった

顔をあげると、目があった。またさらに温度が上がる

「ん?」
「や、なんもないっす……わっ」

ぐいっとひかれた腕。よろけてどんっと雅にぶつかってしまった(正確にはたおれこみそうになったがこらえた)

「水溜まり。」
「あ、ありがとう」

きゅうと心臓が音をたてた。
絡まった手と手、可愛いと小さく呟く君。

あー、もうドキドキ。

「…たまには、雨も悪くないね、相合い傘できるし。ね、美樹。」
「(くそぅ、無自覚め) 」

そうだね、相合い傘できる雨も悪くない
ふはっと同時に吹き出して、繋がっている手をぎゅっと強く握った









無自覚紳士と相合い傘