「希美? え、具合悪いの!?」
「ち、ちがう…」

腕で顔を隠すようにしていたのに、いとも簡単にその腕はとかれてしまった。

「え…、顔真っ赤…!」
「ちがう!あ、あついの、うん。」

だってさ。あたしのために、早くきてくれたんでしょう。嬉しいな。嬉しいよ。
そんな、些細なことで心が好きだと叫ぶの。

「あー、もう。」
「?」
「早くきて、よかった…」

顔をあげると同時に、あたしは彼の腕の中。
誰もいないからこうやってできる。と少し低くなったまさきの声が耳元で聞こえた。

「ある意味、具合わるくなりそう…」
「ふは」

まさきの心音とあたしの心音が重なる。
心地よい心臓の音。耳を塞ぎたくなる雨の音。

…たまには雨もいいかな。
だって、あたしのために息を切らして、朝早くきてくれる君がいる。
心配そうな顔をして、頭を撫でてくれる君がいる。

「サボんない?」
「へ」
「や、あの…、あ゛ー
ちょっと、希美ぎゅーってしてたい」
「っ」
「ダメ?」
「い、いいいいですよ」

ひんやりとした壁にふたり並んで腰かける。目の前の窓ガラスは、曇っていて外の景色なんて見えやしない。

――雨の音は、暫くやみそうにない。
耳障りな雨の音だけど。いまは、それでもいいや。

「希美、今日の帰り相合い傘して帰ろうか。」
「うん!」

…たまには、雨もいいかな。
だって、君がいるから。






この時期






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