「ねー」
「ん」
「ねーってば」
「ん」

――あたしの彼はひとつのことに集中すると、あたしのことなんて一切かまってくれない。

……今だってそうだ。たまたまチャンネルをかえたらサッカーがやっていて、見始めたら一切かまってくれなくなってしまった。

あたしもサッカー好きだけどさ、さっきから何回このやりとりをやったとおもってるんだい。

「お、カウンター。いけっ、おっ、ナイスー、入った!」
「…今のワンタッチだからよかったね」
「うん、さすがね。」

あたしのコメントに真面目に返事してくれたの今回が初ですよ。気づいてますかね、彼氏さんや。


ふう、と一つ軽くため息をついて座っている彼の後ろに寝転がった。
あたしの顔の横にある彼の太ももを一発殴り、反対側へ顔を向け、窓の外に視線を移す。


――外では、ふわりふわりと木々が風に揺れていた。
緑色の葉たちが少しずつ色を変えてきている。…秋の準備がはじまっている様だ

サッカーは後半30分。2対1。

柔らかい日差しが、あたしの頬にあたる
(眠いな、寝ようかな)

隣にいる彼は、サッカーを見ながらなにか呟いている。
―将来はサッカーの仕事につきたいってこの間ぼやいていた。