「あちゃー…」

――お昼過ぎまで、あれほど快晴だったのに。

教室から見える灰色の空と、大きな水溜まりができたグラウンド。
(お天気お姉さんもびっくりだなー)

あんなぐちゃぐちゃな、グラウンドじゃサッカーもできないだろう。

梅雨のこの時期、いつ雨が降るかわからないから困ると、帰宅の準備をしながら思っていた

「―美樹」


…呼ばれた方に視線を向けると、寝癖の髪をかきながらあたしを待ってる(らしい)雅がいた。
彼はもう準備万端といったように、何度もあたしを呼んだ

「みきみきみき、あ、効果音っぽい」
「ふはっ、あたしも思った――うっし、いこう !」


外にでると、雨音はよりいっそう大きく聞こえた
ザアザアと、アスファルトにたたきつけられる雨は、白いハイソックスを濡らした

「行こっか」
「うんっ」

もう何回も何十回も歩き馴れた畑道を二人ならんで歩く。
ふたりの間には、ひとつの大きな紺色の傘。

ブロォォと、煙をだして走る車。
これから真っ赤に色をつける林檎の木。
どれも今日は灰色の雲のせいか、どこか暗くみえる


「うぉー、髪の毛がうねってる…!」
「あー、そういえば今日、なんかふわふわしてるね」

そういって、傘を持ってない手であたしの髪に触れた。
…触れられた場所が熱い。


「……あ、靴ひもほどけちゃってる…。あー、っと」
「傘もつ、へい」
「へい」










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