「大丈夫だって笑 ■■■は心配性だな。あー……でもまぁ寂しくはある、かな。来週の土曜日映画にでも行かない?」
 
嘘だ。寂しくなんかない。デートなんて二ヶ月は行ってないしそもそも映画なんて見たくもない。
休みは部屋で寝ていたい。どうせまた黙るんだろ?僕がまたそれを取り繕うんだろ?嫌だ。もう、楽になりたい。全然楽しくない。こんなの不自然なんだよ!普通じゃないんだよッ!
 
送信。
 
ぶーぶーぶー
 
『ごめん!土曜日は部活だぁ……』
 
良かった。ホッとした。理由があるならしょうがないんだから。
 
「そっか……じゃあまた今度な笑とにかく部活頑張れよ!応援してるから」
 
自分で自分が気持ち悪い。何かの間違いでこのメールが届かなければいいのにな、と思う。
 
送信。
 
ぶーぶーぶー
 
『うん。るーくんがそう言うなら頑張る!』
 
なんだこいつ。頑張る?馬鹿じゃないのか?何でわからないんだよ……恋人が苦しんでるだろうが!
好きじゃないことくらい気付けよ辛いことくらい気付けよ恋人のくせに恋人のくせに。
 
簡単に騙されるなよ。
 
「気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け」
 
僕は壊れてるのだと思う。こんなに憎いのに、何故縋り付いてしまうのか。
 
僕は電源ボタンを押してまたメールを……
 
 
 
――消せなかった。
 
これを送れば終われる気がする。甘美な誘い。自分が薄く笑っているのに気付いて僕は送信ボタンをゆっくりと押す。
 
だけどすぐに怖くなった。押した瞬間、これから起こるであろう何かに怯えた。
 
中止を選択。
 
「――あ」
 
遅かった。
送信完了の四文字。
力が抜けて頭が真っ白になる。僕はすぐに携帯を枕の下に押し込んだ。
どうしようどうしようどうしようどうしよう。
 
ぶーぶーぶー
 
受信。
みれない。
 
ぶーぶーぶー
 
受信。
やめてくれ。
 
ぶーぶーぶー
 
受信。
もういいだろ!
 
ぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶー……
 
途切れないバイブ。
終わらない呼び出。
 
 
僕は布団にくるまって、唯々この瞬間に地球が滅ぶことを祈った。