(父上が……。とても信じられないな)


「嘘だ! あなたのような悪党と、私の父が行動を起こしてたはずがない!」


「残念だ。これだけ事実を話しても、受け入れてくれないとは。だが」


男爵は急にふふふと笑い、剣を床に落とす。どうやら彼は、リタに対して攻撃をやめたようだ。


「リタ姫よ、お前のその緑色の目で真実を見てくるのだ。そうすれば、なぜお前達父娘が襲われたのかも、わかるはずだ。彼らとの関係性を大事にしろ」


「わかった。だけど、勘違いしないでよ。別に、男爵を信じてるわけじゃないから」


「わかっているとも。さあ、早く行きなさい。ここは先程、女王陛下の部下達が嗅ぎ回っていた。この館は、もう安全ではない」


「でも、男爵は?」


「私は『三人は始末した』と、適当に嘘を言っておく。さあ、早く」


リタは少しの間、沈黙した。それからまた、グラナダ達に言う。


「グラナダ、ロータス。行こう」


三人は屋敷から、一目散に走って逃げる。彼女達を逃がした後、執事のトートが男爵に話しかける。


「男爵様、本当にあの三人を逃がして良かったのですか? アズラ女王様がお怒りになられるのでは?」


「何を言っている、トート。私はアズラ女王様の行動に疑問を持つようになったのだ」


「と、おっしゃいますと?」


「実は最近、女王様はやたらに大勢の魔族達を捕まえている。そして、弱いと判断した者を瞬時に抹殺していると、部下の一人が教えてくれたよ。そこで、その目的を調べるために彼らを扱き使っているというわけだ。まあ、彼らは気づいていないだろうが」


「なるほど。流石は男爵様(少々手荒で、ずる賢い気もいたしますが)」


男爵と執事は、話を終えると、一緒に笑い始めた。と同時に、手下の魔物達も一緒に笑い始めた。