チッ!と。

龍太郎の拳が小岩井の顎を掠めた。

その動きに小岩井は目を見張る。

龍太郎が立禅の稽古をしていたのは、彼も用務員の仕事の最中に見かけていたので知っている。

あれは人間の持つ本能を呼び覚まし、動物的な反応や動きを可能にする為の稽古。

今の見違えた龍太郎の動きを見るに、稽古は早くも効果を表し始めたという事か。

アッパーを繰り出した龍太郎は、そのまま止まらず体を反転させてバックハンドブロー!

更に半回転してフック!

更にはもう半回転して後ろ回し蹴り!