それほどまでに立禅に没頭している龍太郎に、どうして声などかけられようか。

今、声をかければ、修行の邪魔をするだけのような気がして。

「……」

微かに微笑みを浮かべたまま、小夜はそのまま校舎へと入って行った。

龍太郎は強くなりたいと望んでいる。

ならばその望みを叶えてやる事こそが、小夜の望み。

その為ならば、彼と会話を交わせない事など苦痛にならない。