だが今の龍太郎に、小夜は声をかけられない。

刺々しさ、剣呑さを感じさせるからではない。

今の龍太郎が、『希薄さ』を感じさせるからだ。

まるでそこにいないかのような、存在感のなさ。

朝の澄み切った空気の中、立禅を行う龍太郎の姿が、透けて見えてしまいそうなほどの希薄さを感じさせた。

…小夜も武道を嗜む身。

何故そのような現象が起きるのかは、何となく理解できた。