「でさ、杏ちゃんの母さんがようかん出してくれてさ」
この間の休日から1週間。
すごく迷惑に感じてたけど、なぜか少しだけあの日が楽しかった、と思っている。
でも、それがどうしてなのかはわからない。
ママも相当宇野くんのことを気に入ったみたいで、また連れてきてって何回も行ってる。
もう連れていかないけど。
この間なんて、『あら、どうして今日は宇野くんいないの?』とか言われたし。
なんで、宇野くんいることが当たり前みたいになってんのさ。
「杏ちゃんの母さん、マジ綺麗だったし!」
「宇野、その話もう5回は聞いたわ」
昼休みになると、宇野くんはいつもあの日の話をしだす。
何がそんなに良かったのか、あの日のことがすごく印象的だったらしい。
「そうだっけ?」
「自覚がないところが問題ね」
もう聞き飽きた私たちは、呆れ顔で話を聞いてる。
美保に関しては、耳栓してる日もあった。
さすがに私は耳栓はしてないけど…
「杏ちゃん、また呼んでね!!」
「は?もう来ないで」
っていうか、あの日だってママが勝手に呼んだだけなんだから。
私は全然ウェルカムじゃないんだから。
「いいし。俺、勝手に行くから」

