「…宇野くん?」
「…帰ろ、杏ちゃん」
そう言って私の手をとって歩き出した。
…歩き始めて、10分。
いまだ何も話さない宇野くん。
どうしよ…やっぱ機嫌悪いのかな?
…でも。
さっきから歩くペースの遅い私に、歩幅を合わせてくれてる。
こういうところ、本当優しい。
っていうか…
「…宇野くん」
「ん?」
「あの…手…」
繋がれた右手は、教室からずっとそのまま。
私、宇野くんと初めて手繋いだの、いつだっけ。
よく考えたら、隣に宇野くんがいると、いつも手を繋いでたっけ。
なんで、いつも宇野くんがいるんだっけ。
いつから、当たり前に思うようになったんだっけ。

