「…西浦?」

「えっ…あ…」



ふと顔をあげると綾部くんと目があってしまい、私はとっさに下を向く。


…最悪。



「うわーびっくりした。犬の散歩?」

「う、うん」

「家この辺なの?」

「今日はめずらしく遠くの公園来ただけ」



めずらしいことはするもんじゃないね…ほんと。



「名前なんていうの?」

「…ミルク」

「へえ。カワイイな」



“ミルクティー”からとって“ミルク”なんだけどね。


ま、それは言わないでおこっと。


単純すぎて笑われちゃう。



「あ!ねえ西浦さん!」

「な、何ですか?」



顔も名前も知らないサッカー部の1人がいきなり大声をだした。


誰だっけ、この人。


部員…Bでいっか。


Aは前に、土屋くんにつけちゃったから。


さすがにもう、“部員A”なんて呼んでないけど。