あの人、名前なんていうんだろ?
聞くの忘れちゃったなあ。
まあ、もう関わることもないし、いっか。
「さすが杏」
「褒めてんの?それ」
「すごく褒めてる」
そのあとすぐに、美保は帰っていった。
お腹がもたん!とか言いながら。
本当、よく食べるなあ。
今日も学校でお昼食べたすぐあとに、クッキー食べてたのに。
お腹すいてるなら、まっすぐ家に帰ればよかったのに。
まったく、大体なんでうちに来てたの?って話だよね!
委員会なんて嘘までついちゃってさ。
「…好きな人、かあ…」
恋かあ…
面倒くさいしなあ…
でも、美保が言ったように、私って存在を好きっていってくれる人、本当にいるのかな。
私、こんなに性格もひねくれてるし、もしかしたら美保だけかも。
…いるかなあ。本当にいないかも。
いつか、無理なくそういう人を好きになれたらいいな。
…なんて、ちょっと思っただけなんだけどね。

