好きな人が、できました。



「うそ…本当なのそれ!?」

「ちょっ、静かにしてよ!!」



あまりに美保の声がうるさすぎて、私もまわりにいた人たちもびっくり。


ごめんごめん…なんて言いながら、美保はまた小さな声で話し始めた。



「杏、一緒にまわるのいいよって言ったの?」

「うん…なんか、自分でもよくわかんないんだけどね」



さっきのことを思い出してだんだん恥ずかしくなってきた私は、両手で頬を包んだ。



「何なの、この展開!!」



でも、自分でもよくわかんない。


浴衣姿カワイイって言われて、舞い上がっちゃう自分も。


文化祭を一緒にまわるのを、楽しみにしてる自分も。


自分なのに、自分じゃないみたい。



「杏もとうとう恋かあ…」

「ち、違うってば!」



そんなんじゃない。


そんなんじゃないけど…。


私は、飲みかけのミルクティーをぎゅっと握りしめた。