「…別に。私、もう行くから」
「えっ…てか、浴衣!?」
「ぎゃっ!?」
歩きだそうとする私の腕を思いっきり引っ張る宇野くん。
そのせいで、変な声でたし…最悪。
「ああ…杏ちゃんのクラス、縁日だっけ?」
「そう。女子はみんな浴衣なの。男子も、持ってる人は浴衣とか甚平とか着てる」
「…」
私の浴衣を見て、ボーッとする宇野くん。
…返事がない。
「…宇野くん?」
「え!?あ、ああ…」
何か考え事でもしてたのか、宇野くんはびっくりしてる。
なんか、おもしろい。
…なんて、のんきなこと考えてたら。
宇野くんは言ったんだ。
「カワイイ…」
「えっ…!?」
「…え?」
な、なに言ってるの!?
“可愛い”
突然のコトバにあからさまに動揺してしまう。
いや、だって。
そんなストレートに言われるなんて、思ってもみなくて。
いつも、イヤガラセばっかだったから。

