「ありがと。じゃ、私行くね」



更衣室を出ると、廊下は準備で行き交う生徒でいっぱいだった。


…それにしても。


浴衣って歩きづらい。


足が開かないから、自然と小まただし。


ドンッ



「きゃっ」

「おっと」



や、やだ…


何かにぶつかった衝撃でつまづいてしまった…


しかも、誰かに支えてもらってる。


恥ずかしい…



「…す、すみません」



浴衣で動きづらい体勢の中、頑張って無事生還。



「…杏、ちゃん?」

「へ?」



こ、この声って…


顔をあげると、すでに見慣れたあの人の姿。


どうしてこう、行くところ行くところに現れるのかな。


だから誤解されるんだよ。



「…宇野くん」


「なんでそんな嫌そうな顔すんの」



だって…なぜか宇野くんといるとそういう顔になっちゃうんだよね。