「えっ?ちょ、宇野くん?」

「おい宇野!綾部がもう西浦予約してんだけど!」

「知るかよ」



そのまま私は宇野くんに手をひかれて歩いていった。


宇野くん…どうしたの?



「う、宇野くん?」



私が声をかけても、宇野くんは返事すらしてくれなかった。


このときの私は綾部くんのことなんて忘れてて、置いてきちゃったことなんてもっと忘れていた。


ただ、ただ宇野くんのことだけ、考えていた。


宇野くんのこと、だけ。



「宇野くんってば」

「…ごめん、杏ちゃん」



ようやく立ち止まったときには、私の家の近くまで来ていた。


宇野くんは手を離して、はあ、と大きなため息をついた。



「ちょ、どうしたの?」



宇野くんはちらっと私を見上げると、また視線を地面に戻して言った。



「俺、余裕ないのかも」

「余裕って何の…」

「マジかっこわりぃ…」



そう言ってしゃがみこんだ宇野くん。


やっぱり、何かに悩んでるんだ。