それしか言わない宇野くんは、また少し不機嫌そうだった。


ぶすっとした顔をして、私の目を見ない。


どうして、どうして不機嫌になるの?


わからない。


宇野くんがわからない。


でも。


こんなことを考えてる自分もわからない。


別に宇野くんが元気だろうが、不機嫌だろうが、どうだっていいじゃん。



「…宇野くん?」



宇野くんは私の目を見ない。


でも、その瞳がいつもと違うのはわかる。



「杏ちゃんは…何、試合?綾部?」



私はうつむいてただ頷いた。


だんだん鋭くなっていく宇野くんの視線に耐えられなかった。



「宇野」



そのとき。


この気まずい空気に割って入ってきたのは、土屋くんだった。



「…なに」

「準備、順調?」

「…まあ」



そう言うと、宇野くんは私の手をとって歩き出した。