そして、静かに口を開いた。



「俺、焦ってんのかも」

「どうして?」

「杏ちゃんが、デートしたって聞いて」

「デート?」



私、デートなんてしたっけ?


もしかして、昨日のこと?


だからさっき、誕生日の話が出てきたの?



「昨日の?」

「なんで映画とか見に行ってんの」

「だって綾部くん、誕生日だったし」



それは後から知ったことだけどね。



「なんで綾部とデートしてんの」

「あんなの、デートじゃないよ」



ぶすっと頬を膨らました宇野くんは、私に顔を背けて歩きだした。



「…俺だって、2人で映画いきたいのに」

「え、なに?」

「…なんでもねぇよ」



宇野くんの声は小さすぎて、私の耳には届いていない。



「俺の誕生日だってもうすぐだっつの」