「…手、別に逃げないし」
「…そう」
なんとなく、気まずい空気が流れた。
そのときだった。
「西浦ー昨日はありがとな」
綾部くんが私たちのところにやってきた。
これから部活なのか、ボールを手に持っている。
「マジ楽しかった!」
私が何も言えないでいると、返事をしたのは、私ではなく“宇野くん”だった。
「邪魔だ、どけ」
目の前に立つ綾部くんを睨みつける宇野くん。
2人は背が高いから、それだけでも迫力がある。
「お前に言われたくないね、宇野」
「ああ?」
睨み合う2人に、教室が静かになる。
みんなが、2人のことを見つめていた。
「ちょ、やめてよ2人とも」
「俺、昨日誕生日だったんだよね」
「は?だから?」
私のことなんて無視して、2人は更に険悪ムードになっていた。
ギャラリーも、廊下にまで増えている。

