「杏ちゃんの荷物これ?」
なんて言いながら、私のバックを手に取る宇野くん。
ちらっと後ろを見ると、じゃあね~って手を振りながら教室を出て行く美保と目があった。
「もうヤダ…」
「さー帰ろ!俺、腹減ってんだよね!」
知らないよそんなの…
もう、こんな人と一緒に帰るくらいなら、1人で帰ったほうが数倍マシなのに…
「杏ちゃんって、家どっち?」
「こっちだけど」
「ふーん。じゃ、行こ」
教室から、私の鞄はずっと宇野くんが持ってる。
1人で帰っちゃおうにも、鞄がないから帰れない。
「あのさ」
「…なに?」
学校からも離れて、もうすぐ私の家。
この男、本当に家まで送ってくれる気なのかな?
「杏ちゃん俺のこと、覚えてない、よね?」
「え?」
覚えて、ない?
私が?宇野くんのことを?
そんなの…
「覚えてるもなにも、昨日初めて喋ったじゃん」
「…だよね」
何を言ってるの、この人。

