「スミレ、ありがと」


「うん、またね?」


秋とは普通に話すんだ。
久しぶりに見た、スミレの笑顔。
弾んだ声も、久しぶりに聞いた……なんか、泣きそう。
すべて俺に向けられたものじゃない。そう思ったら苦しくておかしくなりそうだった。
 パタンッ──
ドアが閉まり、秋が心配して来てくれたんだと思っていても、話す気分にはなれなかった。


『……適当に座って』


「うん」


ベッドの端に腰を下ろし、何か言いたげに口を開いては閉じを繰り返していた。


『金魚がエサ食べるマネか?』


「へ? 違っ!」


机に頬杖を付き、無気力な顔で『ハッキリ言えよ』


「怒ってる?」


『……怒ってないよ。ただ、4日もまともに話してないから……』


「まじで?」


『うん。さっきのが会話に入るなら久しぶりになる。』


力からなく笑うと、目から涙が零れた。
秋をチラリと見ると、戸惑った顔でタメ息を吐いた。


「それ聞いた後ですげー聞きづらいんだけど」


『なに?』


ボーっと窓を見つめ思い出したように『俺、花火大会行かないかも』と秋に伝えた。


「なんで?!」


『聞きづらい事ってなに?』


話を逸らすと「せっかく誘ったのに、こんなことでやめるって……」


『こんなこと……お前にはこんな事でも、俺には大事な事だから。
せっかく誘ったのに……ほんとそうだよな?』


力なく笑い、目を伏せた。


『今の俺が一緒に行ってもみんなに迷惑かけるだけだし。楽しくなんて出来ない……』


「晴斗……ごめん」


『なんで?』


「無神経だったなって。
俺だって東雲に無視されたら落ち込むと思うし。」


『秋の場合熱出るかもな?』


「フフッ。まだ時間あるし、ギリギリまで待つから、それでもダメなら連絡して?
俺からみんなに伝えるから。」


『ありがとう』


「いいよ」