『はぁー。』


学校に着き机に突っ伏しタメ息を吐くと「どうした?」と話しかけられ、顔をあげると何も知らない秋を見ると再び机に突っ伏した。


『スミレを怒らせた。』


「何でまた?っつーか昨日は話せたって喜んでたのに。」


『色々あって。幸せだったのに……』


スミレの肩に寄りかかり眠った時の記憶が蘇り、またタメ息が出た。


「無視された訳じゃないんだろ?」


『うん、まだされてない』


「まだって……とりあえず謝ってみたら?」


『そうする。無視されたら連絡するから。』


「いらねー」


笑うと「とりあえず頑張れ!」と頭をクシャクシャに撫で、田辺い呼ばれ行ってしまった。
 ──せっかくのスミレの手作り弁当もほとんど味が分からなかった。


『はぁー。もっと味わって食べたかった……』


「晴斗くん一人?」


教室で一人お弁当を食べていると東雲が声をかけてきた。


『うん』


「いつもいつもお弁当だね?」


『うん』


「……私も作ってこようかな?」


『お弁当じゃないの?』


「あ、うん。コンビニか売店」


『そう。……座れば?』


「うん。」


前の席に座るとジッと俺を見つめてきた。


『なに?』


「今日は元気ないなって」


『よく見てるんだな?俺の事。』


俯く東雲にひとつ質問をしてみた。


『あのさ、女の人って寝言とか聞かれるの嫌だったりする?』


「寝言?ないようにもよるけど、好きな人には聞かれたくないかな?」


『何で?』


「だって、恥ずかしいじゃん。寝言って無意識に出てるものだし自分じゃコントロールできないから、変な事言ってたら……」


急に黙り込む東雲は両手を頬にあてたまま
ショックを受けた顔をしていた。


『どこまで想像してんの?』


呆れて笑うと視線だけがこっちを向いた。


『ふっ。なに?』


「近くで笑った顔見るの初めてだなって……」


『そうかもな。……なんか東雲と話してたら元気出てきた。
ありがとうな?』


「いいよ!晴斗くんの役にたつなら何でもするから!友達として……!」


哀しい顔で笑う東雲に『何でもするとか簡単に口にするなよ。』そう言ったら謝られた。


「ごめん。」


『東雲はちゃんと役に立ってるよ。
東雲に会って学生生活が変わったし……』


「え?」


間抜けな声にまた笑った。


『色んな意味でありがとう。』


「うん……?」


『ふっ……。』


お弁当を食べ終え、スミレの事を思っていた。
今何してるんだろう?
俺がいない間のスミレの事をあまり聞いたことがなかったけど、当分聞けそうにないなとタメ息をついた。