──翌朝、設定した時間より30分早く目が覚めた。


『ん~……まだ6時半か』


二度寝しようと何度か寝返りをうつも、逆に眠れず起きてしまった。


『ふあぁ~~』


階段を下りながらアクビをすると、クスクスと笑い声が聞こえた。


「間抜けな顔、晴斗も眠れないの?」


『そんなとこ、スミレもか?』


「うん。なんか落ち着かなくて……」そう言いながら、階段を上がってきた。


「トイレ出たら変な声するからビックリした。」


『ごめん』


階段に間を開け並んで座ると、スミレが思い出したように口を開いた。


「そういえば明日行ったら夏休みだね?」


『え?そうなの?』


「知らない、の?」


『うん。忘れてた。だから最近みんなそわそわしてたのか。』


スッカリ忘れてた。
危うく今年も授業受けに行くところだった。何度行こうとして友紀ちゃんに笑われたっけ?
 長い休みなんかもらっても退屈なのには変わりなくて、スミレが来るこの時期だけが唯一楽しみだった。
 花火を見に行った記憶だけが毎年増えて、休みが明けて変わり果てたクラスメートを見て、取り残された気分になるのも当たり前で。


「晴斗ってさ、いつも何してるの?」


『何って?』


「休みの間、何して過ごしてるの?」


『えっと……出された宿題をひたすら解いて、友紀ちゃん達が旅行に行くの見送ってから毎日ボーっとするか、本読んでるか……』


「毎年?」


『ん、毎年。俺友達少ないっていうか、居ないし。』


 胸を張って言える事じゃないけど、ついでに言うならクラスの大半名前を知らない。


「なんか、ごめん」


『なんで謝るの?』


「なんとなく」


『いいよ、そんな気使わなくて。俺には普通の事だから』


「うん......。」