いとこ ~2度目の初恋~

視線の先をたどると、東雲がコッチを睨んでいた。「どうしてもって言うから」苦笑いの秋に、東雲が近づくと秋が後ずさった。


「晴斗くん、倒れたって」


『あぁ、うん。 東雲の事だから心配して授業サボると思ったから、秋に口止めしたんだ。ごめん』


こんな嘘なら、大丈夫だよな?
 俯く東雲はカバンを持つ手にギュッと力を込めボソッと呟いた。


「……私だけ除け者みたいで、なんか嫌」


『ごめん』


「それも嫌」


『あぁ……』


ただ俯き嫌々を繰り返す東雲の気持ちは分からなくもない。
 ごめん以外の言葉を待ってるのも知ってるけど、その言葉が何なのか俺には分からなかった。


「何言っても“嫌”なんだな」


後ろに下がっていた秋が、イヤミったらしくそう言った。
 好きな子を苛めたくなる心理が働いてるのか、ただのヤキモチか。


『止めろって』


一応止めてみるけど、口を閉ざした東雲は俯いたままタメ息吐き、秋は「チッ」と舌打ちをした。
 二人に挟まれ困っていると、後ろから肩を叩かれた。


「この状況は?」


メガネをクイッと上げ、俺を見る水沢に助けを求めると、突然花火大会の話を始めた。


「来週の花火大会、秋は行くんだろ?」


「それ、今話すことじゃなくね?」


「出来れば今聞きたい。で、行くのか?」


「行くけど……」


渋々答えた秋と同じ質問を東雲にも聞いていた。



「君は?」


それでも俯き黙っている東雲に「行く、行かない、どっち?」ゆっくりとキツい口調で聞かれ「行きます。」と強制的に言わされていた。


『水沢って時々怖いよな……』


秋に同意を求めると「うん」と苦笑いした。