いとこ ~2度目の初恋~

秋にそう聞かれ、何も言えなくなった俺に、秋が悲しげに笑った。


「……」


目を伏せたまま何も言わない秋に『東雲とか』と付け足してみた。
 一瞬ピクリと肩が動いたっきり、何の反応もなかった。


『今度はお前の番だぞ?』


「東雲は、晴斗が誘った方が喜ぶって……絶対」


『……。』


 ──自然とその話は終わり、チャイムが鳴るまでの時間を、横になり天井を眺めやり過ごすことにした。


『今何時だろ?』


俺の言葉への返事はなく、体を起こし見ると、秋がベッドの上で眠っていた。
 スヤスヤと寝息をたてる姿に微笑んだ。
秋は秋で悩み中か……
再び天井を眺め、ボーッとしてるうちに眠ってしまったらしい。
目を開けると外は赤く、放課後と呼べる時間になっていた。
 体を起こすと、眠っていたハズの秋の姿もなく、カーテンの向こうででは誰かの話す声が聞こえた。
 誰だろう?
そっとカーテンを引くと、水沢と目があった。


「起きたか?」


『うん……秋は?』


「カバン取りに行ってる。」


『そっか。えっと、長居してすみません』


先生に頭を下げると、「迷惑掛けられるのが私の仕事だから」と嬉しそうに笑っていた。
布団から抜け出ると、伸びをしベッドに腰掛けた。そこにちょうどカバンを取りに行っていた秋が戻り、「晴斗、ちょっと」と手招きをした。


『……?』


 秋からカバンを受け取り『どうした?』と訪ねると、小声で「悪い、ついて来ちゃって」とドアの向こうを目配せした。