いとこ ~2度目の初恋~

『スミレと花火見に行くのに倒れてなんかいられないし』


「……無理しないでね?」


『うん。でも、花火は行くから』


「うん。誘ってくれてありがとう、嬉しかったよ?でも、私的にはもうちょっと早くに誘って欲しかったなぁなんて……」


『……あ、ごめん。』


動揺する俺にスミレは続けた。


「浴衣着るから、感想も言って欲しい」


『頑張ってみる』


「それと……はぐれないようにちゃんと手も握ってて欲しい」


『それも、頑張ります……』


笑いを堪えてるのか、声が震えていた。


「ふふっ、よし!」


『じゃあ、来るの待ってるから』


「うん。お大事に?なのかな、またね?」


『ん、また』


スミレが電話を切ったのを確認し、ケータイを閉じると、息を吐きながら倒れた。


『フゥ~……』


「終わった?つうか、耳真っ赤だけどどんな話ししてたの?」


『秋か……ビックリした』


 どこに居たのか、カーテンが開いた向こうに先生の姿はなく、視線に気づき聞くより先に秋が話し始めた。


「先生には少しの間席を外してもらったから。聞かれてると話しづらいかと思って。」


『ありがとう。全然気づかなかった……』


「なあ、あの先先生愚鈍なの?」


『先生の事?』


「他に誰が居んだよ?」


『はは……』


「説明しても「なんで?」とか「大丈夫よ!」しか言わないし、イラっとして追い出しちゃったけど、大丈夫かな?」


『あの先生ホワホワしてるから。……で、秋はどこにいたの?』


「俺は保健室の外で待ってた。話し声が途切れたから入ってきたけど、スミレに怒られたの?」


『まぁ、そんなところかな。泣かせちゃったみたいで……。』


「だろうな、俺もびっくりしたもん」


『迷惑かけてごめん。改めてありがとうな?』


「うん、別にいいけど……なんか照れる」


襟首を掻きながら、笑う秋は視線を逸らしたままベッドに腰掛けた。


『──秋は今年の花火大会、誰か誘ったりしないの?』


「誰かって?」