「いいから早く掛けてやれよ」


『うん』


勢いに任せ通話ボタンを押し、耳に近づけて直ぐスミレの声がした。


「晴斗?!」


『うん』


「大丈夫なの?!」


『うん、今は落ち着いてる』


「そう。話してる途中で電話切っちゃうんだもん、かけ直しても出ないし……
繋がったと思ったら秋で、晴斗が倒れたって言うし……!
ほんと心配したんだから!」


まくし立てるように話す声が秋まで届き苦笑いを浮かべながら、「まぁ、そうなるわな」と言った。


『ごめんなさい。』


 子供のように泣きじゃくるスミレに何度も謝り、その度に言葉にならない声が返って来た。


『もう大丈夫だから。』


今すぐ駆けつけ抱きしめて安心させてあげる事が出来るなら、今すぐにでも飛んでいきたいけど、それが出来ない分、謝り安心させる言葉をただ言い続けるしかなかった。
 俺を見て最初は苦笑いしていた秋も、やがてそっと席を立ち何処かへ行ってしまった。


「心配したんだからぁ」


鼻を啜る音が愛おしくて、胸がチクチク痛んだ。


『ごめん。さっき起きて連絡くれてたことも聞いた。心配させてごめん。
でも、倒れるとかカッコ悪いよな?』


明るく言ってみたけど、原因が分からない分少し怖かった。
先生が言ったように急激なストレスで倒れたのなら尚更スミレには言えない。


「…身体弱すぎ」


そう言って笑った声にホッとし、突然の沈黙のなかスミレが鼻を啜る音が不規則に聞こえた。


『……落ち着いた?』


「うん。ごめんね?泣いたりして」


『俺が泣かせたんだし……』


「本当に大丈夫なんだよね?」


『うん。秋が着いててくれてるし、保健室で休んだらだいぶ良くなった。』


「それならいいんだけど」