「……陽向、花火大会行こうか?」


『えっ!?』


「えっ?!」


水沢の言葉にキレイにハモった俺と先生を見て、水沢がアハハッと笑った。
 水沢の笑い声初めて聞いた。


「どうしたの急に?」


自分の存在を消し、二人の会話を黙って聞いていた。
 本当は今すぐ帰りたい、立ち去りたいが、水沢から花火を受け取らない限り出られない俺は、ひたすら存在感を消すことに専念していた。


「たまには良いかなって。行きたくないなら別に、無理しなくてもいいから」


「どうしよう」


腕を組み机に寄りかかる先生が、この間より色っぽく見えた。


「晴斗と秋もいるから、二人で、じゃないんだけど……」


その言葉を聞いた先生の表情が変わった。


「行ってもいいよ?近くで見てみたいし、家にいても暇だしね?」


「本当!?」


水沢の顔は見えないものの、声のトーンからして嬉しいんだろう事はハッキリ伝わった。
 タイミングを探りながら、声をかけると、二人の視線が俺に向いた。


『あのさ、帰っていいかな? 花火受け取に来ただけだし』


「あ、ごめん。忘れてた……」


その言葉は、俺と花火どっちに対しての言葉なのか、花火を受け取るとカバンに無理矢理閉まった。


『じゃあ、お邪魔しましたぁ……』


 廊下に出ると隙間なく扉を閉めた。
花火を受け取るだけで疲れるとは。
色んな意味でもドキドキした。
どうして俺が居るときに先生を誘うんだろう?
 その後、ちゃんと帰ってきた自分がいつからベッドで倒れていたのか、制服を脱ぎながらカバンを見つめた。
当日一緒に行ってくれるか分からないけど


『すみれの事誘ってみようかな……?』