──放課後、言われた通り保健室に来ると、扉の前でドアノブに手を掛けたまま動けなくなった。


『よし』小さく呟き、静かに扉を引いた。


『……失礼します』


扉を閉め振り返ると、二人がこっちを見ていて、水沢には「意外と早かったな」と言われた。


『あぁ、帰る以外することないから』


ごめんを呑み込み、行き場を無くした身体が、場違いな空気を感じ取りソワソワしていた。
 2人の世界に割り入ってしまったようで申し訳ないのと、つい二人の動きを見てしまう自分が、いけない事をしているようで複雑な気分になる。
さっさと花火を受け取って帰ろうと思う俺に


「いつまでもそんな所にいなで、こっちに座れよ?」


と親指を立てベッドを示す水沢に言われ


『いや、うん』


 断れずに従うことにした。
ドギマギしながら水沢の後ろを通り、足早にベッドに近づくとへたり込むように座った。


「ひな、預けてたものは?」


「ん? あれならここに……」


おもむろに手前の引き出しを開けると、隠したとは言えない程堂々と花火がしまってあった。


「帰る際ほかの先生に見つからないようにしてね? 怒られるのは私なんだから」


「大丈夫だよ」


怒られるのを知っているなら隠さなければいいのに。の前に持ってくるのおかしいだろ。