話しが理解出来ずにいる俺に、一つ息を吐きメガネのフレームの間を二本の指でグイッと上げ、再び口を開いた。


「唐突すぎた。この間叔父さんに手持ち花火貰ったんだけど、俺やらないから貰ってくれないかな?って」


『あぁ、別に構わないけど、アイツも喜ぶだろうし』


田辺とじゃれてる秋に目を向けると、水沢がプッと笑った。


『ん?』


「じゃあ、帰りに保健室で」


『なんで保健室?』


立ち去ろうとする水沢を引き止め訊くと「持ってきたから、花火」


『え、まじ?』


「うん、陽向先生に預かってもらってる。なんか不味かったか?」


『いや、そうじゃなくて』


俺が断るとか考えなかったのかな? 先生が預かってるって言ってたけど、取り上げられたのとはきっと違うよな?
 ……陽向先生って保健のだっけ?


「花火大会近いから迷ったんだけど、見るよりする方が楽しいだろ?」


『まあ。水沢は行かないの?花火』


「陽向が行くならいくし、ダメだったら家にいるかな? 人ごみ苦手だし。 あっ、でも出店があるからなぁ……」


意外と子供っぽい所もあるんだな、と少しホッとしながら悩んでいた。


『俺は……』


「秋と行くんだろ?」


『秋もだけど、いとこが……毎年、花火大会が近づくと来るいとこが居るんだけど、今年は来るかどうか』


頬杖を付き、タメ息を吐いた。


「誘ってみれば? 毎年来てるなら確認したい事があるって言えば怪しまれないし」


『言うのは簡単だけど、あんま話したことないし、いきなり電話したら変に思われるかも』


「たまには自分から行動しろよ。待つんじゃなくてさ?」


『いとこじゃなかったら、すんなり聞けたのに……』


「お前も大変だな?何となく分かるよ。
家族とか世間体とか色んな事考えてると、本当にこれで良いのかな?って。
辞めようかって何度も悩んで、俺はアイツを選んだ。
 実は、もう一人居たんだ。俺の許嫁。
その人は陽向の姉でさ、父は陽向の姉と結婚させたかったみたいで、何度かデートもしてみたけど、やっぱ違くて。
 アイツじゃなきゃダメなんだ。」


優しい笑みを浮かべながら、どこか遠い所を見つめていた。