──あれから何日が過ぎたんだろう?
秋が学校に行けるようになって、噂も消え退屈な毎日に戻ったのに、なんで水沢たちと楽しそうにはしゃぐ秋を、羨ましいと思ってるんだろう?


 あの雨の日に東雲に会っていなければ、こんな気持ちも見ない振り出来たのに。タメ息を机に落とし、そのまま突っ伏した。
目を閉じ耳を塞いでみたけど、ガヤカヤと騒がしい音は塞ぎきれず、指の隙間を縫って耳に届く。


『ハァ……』


 俺の居場所は、この世界のどこにあるんだろう?そんな事まで考えだす自分に、おもしろくもないのに笑えてきた


「晴斗、大丈夫か?」


『ん?』


顔を上げると、水沢が怪訝な顔で俺をみていた。


「あんま考えすぎんなよ?」


『ッ……その言葉、もう少し早く言って欲しかった』


「? お前変だぞ、具合が悪いなら保健室で休んでれば?」


『いや、行かないって決めた…から』


水沢から目線を逸らすと、あの時と同じ背筋が寒くなる目つきで俺を見据えたまま近づき


「もしかして、遠慮してんの?」


切れ長の目が俺の目を捉えた瞬間、金縛りに合ったみたいに動けなくなった。
まるで、蛇に睨まれた蛙のようだ、と頭だけがやけに冷静だった。


『そんなわけ……』


やっと出た言葉も、最後まで言えずに消えていった。
 そんな俺をからうかのように、耳元で「フッ」と笑い「晴斗は許してやるよ」と言った。


『……。』


肩を叩き俺から離れた水沢は、前の机に寄りかかり、未だに動けずにいる俺を見下ろした。


『許すってなにを?』


「お前は安全っだて言ったの」


『それって』


「なにもできない、だろ? する勇気なさそうだし」


『あぁ……』


水沢の言葉を聞きながら、保健室での出来事を思い出していた。先生を抱き寄せた時、俺の頭の中はスミレでいっぱいだった。
 だから、なにもデキナイんじゃなくて、シテシマッタ後なんだけど。


「お~い、聞いてるかぁ?」


『え?ごめん』


我に返ると水沢の話は全く別なモノに変わっていた。


「最後に花火したのっていつか覚える?」


『花火?』