『フゥ~……』


洗濯機に靴下とタオルを放り込み、脱衣所を出ると、シャツのボタンを外し途中でカバンを拾い階段を上がった。


『うう寒っ……!』


湿ったシャツが体温を奪い、部屋に入る頃には鳥肌が立つほど冷え切っていた。
カバンを置きシャツとズボンを脱ぐと、ベッドの上に畳まれ置いてあった洗濯物を掴み、再び脱衣所に向かった。
 冷えた体を温めながら、今日の事を思い返していた。
東雲と付き合ってる噂から始まって、保健室で記憶が蘇って……。


『あと少し……』


時間が掛かっても思い出さないとな……
湿気で曇る天井に息を吐きながら、保健室で自分がしたことを思いだし、顔が熱くなった。
 先生を抱き締めるなんて……


『ブクブク……』


湯船に口を沈め、息を吐く。


『ブクブク……!(あーーーっ)』


恥ずかしさに声にならない声を空気と共に吐き出すと少しだけ冷静になれた、気がした。
 水沢に知られたら俺どうなるんだろう?
想像しただけで寒気がした。


『はぁーー』


 ──お風呂を出ると友紀ちゃんが洗濯機を回そうとしているところだった。


「明日着るシャツ部屋に出しておいたから、明日はそれ着なさい?」


『うん。』


タオル一枚巻いてるとはいえ、さすがに気まずい……。
友紀ちゃんは気にするそぶりも見せず、洗濯機のスイッチを入れると、脱衣所を出ていった。


『──ハァー』


着替えて部屋に戻ると、ベッドに横になった。その瞬間、制服のポケットにあめ玉を入れていたのを思い出し、慌て取りに部屋を出た。


『すっかり忘れてた』


脱衣所の戸を開けると、友紀ちゃんが制服のズボンのポケットを叩いていた。


『あ、ポケットにあめ玉が……』


「あめ玉?」


もう片方のポケットを叩いた時、カサカサと音が聞こえ、友紀ちゃんがポケットに手を入れると、今日貰ったあめ玉が出てきた。


『よかった……』


「この飴、どこかで見たような?」


『俺の部屋でだよ、ビンに入れてあるから』


「あぁ!」


思い出せて満足している友紀ちゃんから飴をもらうと、二階へ上がった。


『また増えた』


ビンの中に飴玉をいれ蓋を閉じると、ようやくベッドに横になれた。
 保健室で見たあの日の続きを最後まで思い出せる自信は無いけど、いつか思い出せるのかな?


『いつの間にか雨止んでるし……。ふあぁ~』


今日あれほど眠ったのに、瞼が重たい。
 キーンと耳の奥ので鳴る静寂の音を聞きながら、意識は再びあの日へと戻っていった。