「そろそろ帰ろっか?」


うんと頷く妹を見て、東雲が立ち上がり「ありがと、またね?」と遠慮がちに手を振った。


『うん、また』


手を振る二人に振り返し、姿が見えなくなるまで帰り道を眺めた。
 まだ明るい帰り道を、パラパラと点き始めた街頭が更に明るく照らした。
 秋の家の前に差し掛かった時、ポツリポツリと降り出した雨粒が一気に降りだした。


『ちゃんと帰れたかな?』


家までの短い道を小走りで進むと、ずぶ濡れのまま玄関の軒下に入った。
 扉を開けると、友紀ちゃんがタオルを持ち待っていた。


『ただいま』


「おかえり、すごい雨ね?」


『ん、急に降りだしてきたからビックリした。』


友紀ちゃんからタオルを受け取ると、髪を拭いた。


「きっと、誰かが照る照る坊主を逆さまにしたのね。」


うんうんと頷いたあと「でも、すぐ止むわ」と続けた。
その言葉を聞き、本気で魔女の血が混ざっているんじゃないかと疑ってしまった。


『……』


「なにその人を疑うような目。あぁ、分かった!また人を魔女扱いしてるんでしょ?!」


『いや、別に……』


分かり易く顔を背け、靴と靴下を脱いだ。


「止めてよね? 私は人よりカン!がいいだけなんだから」


『自慢かよ』


「事実を言っただけよ?」


腕を組み、ツンと子供のように不機嫌になる友紀ちゃんに気になっていた事を訊いた。


『なんで照る照る坊主逆さにしたって分かるの?』


「子供の頃に似たような雨にあったから、かな?お風呂沸かしてあるから入りなさい?」


 そう言い、リビングに向かう背中を見ながら脱いだ靴下を洗濯機に放り込むため洗面所に向かった。