「い、いつから?」


『さっきから、っていうかずっといたけど』


「え、うそっ!?」


驚く東雲の服の裾を掴みながら、「アメちゃんあげたの!!」と妹が見上げていた。


『元気になるんだよね?』


「うん!」


俺と妹を交互に見ながら、まだ信じられずにいる様子の東雲を「どおしたの?」と言いながら覗き込んでいる姿が可愛くて微笑んでいると、余程驚いたのか「あっ」と声を出し黙ってしまった。


『──びっくりしちゃったんだって』


東雲の代わりに答えると、「どおして?」とキレイな瞳が返ってきた。


『どうしてだろうね? ……かわいい妹だな』


徐々に落ち着きを取り戻し始めた東雲に向き直った。


「あ、ありがとう。アメお兄ちゃんにお名前言って?」


「東雲飴です!5さいです!」


ペコッと頭を下げ、ニッコリ笑うと照れくさそうに姉を見上げた。


『お姉ちゃんのお友達の晴斗です、よろしくね?』


飴ちゃんはニッコリ笑うと、しずく玉をもう一つくれた。そのアメの色は、沈んでゆく夕日と同じ朱い色だった。


「いま帰り?」


『うん。』


会話が途切れ、気まずい空気が流れる中、うっすら出来た水溜まりにダイブする音だけが唯一話の種だった。


「あーちゃん、遠くいかないでね?」


「うん!」


『風邪、治ったんだな?』


「うん、やっと元気になってくれてホッとした矢先にこれだから、ぶり返さなきゃいいけど……」


『大変だな?』


「私しか居ないから。でも、腰にヒモでも付けときたいくらいうろちょろするから、心臓がいくつあっても足りないけど」


フフと笑う顔は、愛しいモノを優しく見守っていた。