「あめー?」


 遠くで誰かを探している声が聞こえ、少女の顔がさらに明るくなり、声のした方を振り返り駆けていった。


「りっちゃんだ!」


傘をクルクル回す姿が東雲に似ていて、思わず笑が零れた。風邪を引いたと聞いて、もしかしてとは思ったけど、今の声を聞いてその疑問は確信に変わった。
 あの門を曲がって来るのは妹を心配する姉の姿で、それはきっと俺のよく知る人物。


「りっちゃ~ん」


「あ、いた……もお~」


声にならない言葉が安堵に変わり、妹の前にひざまずく東雲を見ながら、いつ俺の存在に気づくのかと内心ワクワクしていた。


「こんな時間までなにしてたの?」


「雨がふるから待ってたの!」


「えっ?もしかして、テルテル坊主逆さにしたのアメ?」


「うん!でもね、ちょっとだけしかふらなかったよ?」


不満げな声をだす妹の頭を撫で、優しく微笑む東雲を見て、こんな表情もするんだと微笑ましい光景を眺めていた。


「そう、残念だったね?」


「あしたはふるかな?」


「どうかな~?」


『フッ』


我慢出来ず吹き出す俺に、やっと気づいた東雲はスックと立ち上がると、空よりも赤いで口元を隠した。