────水沢と別れ、まだ明るい夕暮れの道を無心で歩いた。
雨上がりのコンクリートに残った水溜まりを避け、無意識に出るタメ息にハッとした。
いつもより身体が重いのは何故だろう?
「お兄ちゃん、アメたべる?」
コンクリートを見ながら歩く俺の耳に幼い声が聞こえ、ついに幻聴まで聞こえ始めたかと薄ら笑いを浮かべ顔を上げると、雨も降ってないのに黄色い傘を差した少女が俺に傘と同じ色のアメを差し出していた。
「アメ、たべる?」
もう一度聞かれ、黙ってアメを受け取った。
「げんきになるよ?」
『ありがとう』
貰ったアメを見つめ、上を向きタメ息を空に吐くと、赤く染まる空と目があった。
『きれいな空』
「きょうね、雨ふったんだよ?」
嬉しそうに傘をクルクル回しながら、思いっきり笑った顔には前歯が抜けたのか、一カ所だけ空洞が出来ていた。
「あーちゃん、かぜひいちゃったから、たくさんたくさん雨ふったんだよ」
『風邪?』
「コホンコホンってなって、お熱がでたけど、りっちゃんずっといたの!」
嬉しそうに話す少女の名前を、知ることが出来そうなのに、訊くことが出来なかった。
雨上がりのコンクリートに残った水溜まりを避け、無意識に出るタメ息にハッとした。
いつもより身体が重いのは何故だろう?
「お兄ちゃん、アメたべる?」
コンクリートを見ながら歩く俺の耳に幼い声が聞こえ、ついに幻聴まで聞こえ始めたかと薄ら笑いを浮かべ顔を上げると、雨も降ってないのに黄色い傘を差した少女が俺に傘と同じ色のアメを差し出していた。
「アメ、たべる?」
もう一度聞かれ、黙ってアメを受け取った。
「げんきになるよ?」
『ありがとう』
貰ったアメを見つめ、上を向きタメ息を空に吐くと、赤く染まる空と目があった。
『きれいな空』
「きょうね、雨ふったんだよ?」
嬉しそうに傘をクルクル回しながら、思いっきり笑った顔には前歯が抜けたのか、一カ所だけ空洞が出来ていた。
「あーちゃん、かぜひいちゃったから、たくさんたくさん雨ふったんだよ」
『風邪?』
「コホンコホンってなって、お熱がでたけど、りっちゃんずっといたの!」
嬉しそうに話す少女の名前を、知ることが出来そうなのに、訊くことが出来なかった。