そして、どちらかの両親が家を開けると、自然と片方の家にお世話になるという暗黙のルールが出来上がっていた。
 秋は両親が頻繁に旅行に行く事をどう思ってるかは知らないけど、時々淋しそうな表情をするのを見ると、声を掛けづらくなる。


『──ただいま』


帰ると、満面の笑みを浮かべた友紀ちゃんが顔を出した。


「おかえり~、やっぱり降ったでしょ?!」


『俺と秋しか傘差してるやつ居なかった』


俺の後ろで傘を畳む秋に気づいた友紀ちゃんは「あら!? 秋くん、来てたの?」と失礼な言葉を掛けていた。
不思議と嫌みに聞こえないのは、人柄のせいなのか、この笑顔のせいなのか……


「はい! 今日からお世話になります!」


『また家出だって』


「相変わらず仲がいいわねぇ? 家と同じ!!」


ウフフなんて笑いながら、台所に消えていく友紀ちゃんを見て、秋が「友紀ちゃんはいつ見ても笑顔なのに、晴斗は……」目を細め俺を見て首を左右に振った。


『ほっとけよ』


秋から目を離すと、二階へと続く階段を上がった。
 時々耳に入る雨の音を聞きながら、あの少女を思い出していた。


「────晴斗はさ、好きな子とかいないの?」


ベッドに寄りかかり漫画を読んでいた時だった。不意の質問に、ベッドで寝ころぶ秋を振り返ると、雑誌の一点を見つめていた。