いとこ ~2度目の初恋~

沈んでいる田辺をよそに「お互い大変だな」と水沢が笑った。
 微笑み頷いては見たけれど、秋に対して大変だと思った事は一度もなく、水沢に距離を感じた。


「ほら、行くぞ? お前にはお仕置きしないとな」


 ふてくされ俯いたままの田辺を、楽しそうに笑いながら水沢が連れ出した。授業がもう始まるのにどこに行くつもりなんだろうか?
 ふと我に返り教室を見渡すと、いつから居たのか、東雲が自分の席に座り俺に手を併せていた。
 女子に囲まれ驚く東雲は、何があったかを聞かされたんだろう。1人の女子が俺を見て笑いながら東雲の肩を叩いていた。


『……ハァ、最悪な日だ』


机にカバンを置くと、教室を出た。
 授業なんか受ける気分にもなれず、今朝必死に走ってきた自分が馬鹿らしく思える。


『どうしよう?』


自分への苛立ちと、正体不明のモヤモヤが消えるまで教室に戻る気はなかった。
 行く宛のない俺が思いつくのは、ドアに鍵の掛かった屋上か誰もいない保健室だった。
 そして俺は保健室を選んだ。


『失礼します…って誰もいない。』


保健室に入ると、一番奥のベッドにカーテンを引き寝そべった。


『ハァ~』


今頃、東雲はどうしてるろう? チャイムが鳴るのを聞きながら、さっきの失態を思い返していた。


『ああ、クソッ! せっかく地味に過ごしてたのに……』


行き場を失った拳がゆっくりとベッドに落ち、弾みでベッドが軋んだ。


「ここは休憩所でも、ストレスを発散する場所でもないわよ?」